「たかが紙一枚だと思って流しているのでしょうが、現場を見ればその考えは一変するはずです」と、二十年以上にわたり排水管清掃に携わってきた専門家は語ります。彼の仕事は、詰まったトイレを修理し、配管内部を特殊なカメラで点検することですが、そこには利用者が決して目にすることのない驚愕の現実が広がっています。トイレットペーパーであれば、水流の中で数メートルも進めば形が崩れて液状化していきますが、ティッシュペーパーはどれほど長い距離を移動しても、その形状を不気味なほど鮮明に保っています。それどころか、排水管内の汚れや油脂を吸着し、元のサイズの数倍にも膨れ上がって管を圧迫しているケースが少なくありません。特に最近のオフィスビルや公共施設では、コスト削減のために薄いトイレットペーパーを採用している場所が多く、それを嫌って私物の厚手ティッシュを使用し、そのまま流してしまう利用者が増えているといいます。専門家によれば、ティッシュペーパーの繊維は一度乾燥して固まると、岩のように硬くなる性質があり、一般的な家庭用のラバーカップ程度ではびくともしないことも多いそうです。高圧洗浄機を用いて無理やり粉砕しなければならないこともあり、その過程で古い配管が破損してしまうリスクも伴います。また、地下の汚水槽に設置された排水ポンプにティッシュの繊維が絡みつくと、過熱によって火災の原因になったり、システム全体がダウンして建物全体を機能不全に陥れたりすることもあります。「トイレは流せば消えてなくなる魔法の箱ではありません。流したものは必ずどこかに到達し、溶けないものは必ずどこかで牙を剥きます」という言葉は、インフラの維持に尽力するプロならではの切実な警告です。私たちが何気なく行っている行為が、見えない場所でどれほどの負荷をかけ、どれほどの労力を強いているのかを、今一度冷静に考える必要があります。修理には専門の機材を用いた高圧洗浄が必要となり、多額の費用が発生するだけでなく、生活の要であるトイレが数日間使用不能になるリスクも伴います。