災害対策として「水の備蓄」を考えるとき、多くの人はペットボトルのミネラルウォーターを購入することを思い浮かべます。もちろん飲料水の確保は最優先事項ですが、見落としがちなのが、トイレを流すための「生活用水」としての備蓄です。飲料用の水をトイレに流すのは非常に心理的抵抗が大きく、また経済的にも効率的ではありません。そこでお勧めしたいのが、空になった二リットルのペットボトルを再利用した、トイレ専用のストック術です。やり方は簡単です。飲み終わったペットボトルを綺麗に洗い、水道水を口一杯まで注いでキャップを固く閉めるだけです。この水は飲むためのものではないため、数ヶ月から半年程度はそのままトイレの隅やベランダのコンテナに保管しておけます。断水が発生した際、この「トイレ専用ボトル」があれば、貴重な飲料水を一滴も無駄にすることなく、衛生的な環境を維持できます。流し方のテクニックとして覚えておきたいのは、ボトルの配置と事前準備です。トイレの個室内に三本から四本のボトルをセットにして置いておけば、いざという時に暗闇の中でも迷わず手に取ることができます。実際に流すときは、便器の蓋をあけ、一気に三本分程度の水を注ぎ込む必要があります。このとき、ペットボトルのキャップをあらかじめ全て外しておき、両手に一本ずつ持って同時に注ぐことで、一本当たりの流速を補うことが可能です。また、ペットボトルのラベルを剥がさずに、マジックで「トイレ用・飲用不可」と大きく書いておくことも重要です。混乱した被災状況下では、家族が誤って生活用水を飲んでしまうリスクがあるからです。さらに、この備蓄術の利点は、断水が解消された後にあります。水道が復旧した直後は、配管内の錆や空気が混じった濁った水が出ることがありますが、そんな時でも備蓄しておいた綺麗なペットボトル水があれば、最初の数回の洗浄を安全に行うことができます。日頃の生活の中で出るゴミとしてのペットボトルを、家族の衛生を守るための守護神に変えるこの方法は、コストもかからず今日から始められる最も実践的な防災対策の一つと言えるでしょう。
断水に備えるトイレ専用のペットボトル備蓄術