商業施設の清掃とメンテナンスを担当して十五年になりますが、トイレのトラブルで最も頭を悩ませるのが、利用者によるティッシュペーパーの流し込みです。駅やデパートなどの公共トイレでは、備え付けの紙が切れていたわけでもないのに、なぜか自分のカバンから出したティッシュを流してしまう方が後を絶ちません。利用者の方は、たった数枚の紙を流すだけで、それが大きな問題になるとは想像もしていないのでしょう。しかし、不特定多数の人間が利用する施設において、その数枚の積み重ねが排水システムに与えるダメージは計り知れません。大型施設の排水管は家庭用よりも太いものが多いですが、その分、距離が長く構造も複雑です。ティッシュペーパーは水中で分解されないため、配管のわずかな段差や、経年劣化で生じたサビなどの突起物に容易に引っかかります。そこに油脂分や他のゴミが絡みつくと、短期間で岩のような固形物へと変化します。これが原因でメインの排水管が閉塞すると、その系統に繋がっている数十箇所の個室が一斉に使用不能になります。以前、あるオフィスビルで起きた事例では、地下の排水ポンプにティッシュの繊維が大量に絡まり、モーターが焼き付いて故障してしまいました。修理には数百万円の費用がかかり、ビル全体のトイレが一昼夜止まるという大混乱を招きました。清掃時に個室を点検していると、便器の中に水に溶けきっていない白い塊を見つけることがよくあります。私たちはそれを見つけるたびに、いつ詰まりが発生するかと戦々恐々としています。また、最近では水に流せると謳っているティッシュも市販されていますが、それらもトイレットペーパーに比べれば分解速度は遅く、大量に流せば同様のトラブルを引き起こします。施設の管理維持には多大なコストと労力がかかっており、それは利用者の皆さんのマナーによって支えられています。流していいのはトイレットペーパーだけであるという、極めてシンプルかつ重要なルールを、一人でも多くの方に再認識していただきたいと切に願っています。
清掃の現場から見たトイレへのティッシュ混入問題