それは休日の午後のことでした。普段通りにトイレを済ませてレバーを引いたのですが、いつも聞こえるはずの勢いのある水の音が、何だか頼りなく感じられました。その後、しばらく経っても「ジャー」という給水音が止まらず、いつまで経ってもタンクの中に水が満たされる気配がありません。不思議に思ってタンクの重い陶器の蓋を外してみると、そこには驚くべき光景が広がっていました。タンクの中はほぼ空の状態で、給水口からは水が全く出ておらず、代わりにタンクの底にある排水口から、わずかに残った水が虚しく吸い込まれていくような状態だったのです。私はパニックになりかけましたが、まずは落ち着こうと自分に言い聞かせ、スマートフォンで「トイレタンク、水がたまらない、原因」と検索しました。検索結果には、ボールタップの故障や浮き球の引っかかりなど、聞き慣れない言葉が並んでいました。私はそれらの情報を参考にしながら、一つずつ現状を照らし合わせていきました。まず、タンクの中にある大きな球体、つまり浮き球を触ってみました。本来なら水がない時には一番下まで下がっているはずの浮き球が、なぜか高い位置で固定されていました。よく見ると、手洗管へ水を送るための補助ホースが浮き球のアームに絡まっており、それが原因で浮き球が下がれなくなっていたのです。私はホースの位置を直し、浮き球が自由に上下できるようにしました。すると、シューという音と共に勢いよく水が流れ始め、タンクの中に溜まっていくのが分かりました。しかし、安心したのも束の間、今度は水位が一定の場所まで来ても水が止まらなくなってしまったのです。どうやら、無理に浮き球を動かした際に、ボールタップの弁の噛み合わせがずれてしまったようでした。私は再び止水栓を閉め、今度は慎重にボールタップの根元を調整しました。古い歯ブラシで周りの汚れを落とし、パッキンの状態を確認しながら何度か動作テストを繰り返しました。最終的に、水位が適切なラインでピタリと止まり、レバーを回せば正常に流れる状態に戻ったときには、大きな達成感を感じました。今回の経験で痛感したのは、日常的に当たり前に使っている設備のありがたみと、自分である程度の構造を知っておくことの大切さです。プロに頼めば確実ですが、原因がこうした単純な部品の引っかかりであれば、自分でも対処できるのだと学びました。それ以来、私は月に一度はタンクの蓋を開け、内部に異常がないか確認する習慣をつけています。