トイレの便器に溜まる「封水」の水位が、いつもより低い、あるいは高すぎると感じた時、その原因は排水管の詰まりだけとは限りません。実は、トイレタンク内部の簡単な調整で、適正な水位に戻せる場合があります。そのためには、まずタンクの中で水がどのようにコントロールされているのか、その基本的な仕組みを理解することが重要です。 トイレのタンク内には、主に三つの重要な部品があります。一つ目は、水道からタンクへ水を供給する「ボールタップ」。二つ目は、タンク内の水位を感知して給水を止めさせる「浮き球」。そして三つ目は、タンクの底にあり、レバーと連動して開閉するゴム栓「フロートバルブ」です。この三つの連携プレーによって、トイレの水は常に一定量に保たれています。 もし、便器の水位が「低い」と感じる場合は、タンクの蓋を開けて、「補助水管」という細いチューブを確認してみてください。これは、ボールタップからオーバーフロー管という太い管に向かって伸びており、タンク給水と同時に便器へも水を補充する役割があります。この管が外れていたり、オーバーフロー管にきちんと差し込まれていなかったりすると、便器への補充水が行われず、封水が不足します。これを正しい位置に戻すだけで、水位は正常になるはずです。 逆に、タンク内の水位そのものが低すぎる、あるいは高すぎる場合は、「浮き球」の位置を調整します。浮き球が繋がっているアームの根元に、水位を調整するためのネジが付いているタイプが多いです。このネジを時計回りに回すと水位が下がり、反時計回りに回すと水位が上がります。この調整によって、タンクに溜まる水の量、ひいては流す時の勢いをコントロールすることができます。 ただし、これらの調整を行っても水位が安定しない場合は、ボールタップやフロートバルブといった部品そのものが経年劣化で故障している可能性があります。これらの部品の寿命は十年程度と言われており、不具合が見られる場合は交換が必要です。 トイレの水位調整は、DIYでも可能な場合がありますが、仕組みを理解せずやみくもに触ると、かえって水漏れなどのトラブルを招くこともあります。自信がない場合は、無理をせず専門の水道業者に相談するのが最も安全で確実な方法です。