突然の水道管破裂で水が噴き出している時、多くの人がパニックになり、何とかして水の勢いを止めようと試みます。その際、手近にある布や防水テープを破損箇所にグルグルと巻きつけて応急処置をしようと考えるかもしれません。しかし、残念ながら、その善意の行動は、ほとんどの場合、無意味であるばかりか、かえって状況を悪化させる可能性すらあります。 なぜ、テープなどによる応急処置は効果がないのでしょうか。その理由は、水道管にかかっている「水圧」にあります。家庭用の水道管には、常に非常に強い圧力がかかっています。この圧力は、マンションの高層階まで水を届けたり、シャワーから勢いよくお湯を出したりするために必要なものです。水道管に開いた小さな穴や亀裂からは、私たちが想像する以上の力で水が噴き出そうとしています。 市販のビニールテープやガムテープ、布テープといったものでは、この強力な水圧に到底耐えることができません。巻きつけたそばからテープの隙間や側面から水が漏れ出し、全く意味をなさないでしょう。中には、配管補修用の自己融着テープといった特殊な製品もありますが、これらもあくまで一時的な処置であり、正しく施工するには専門的な知識と技術が必要です。素人が見様見真似で使っても、完全に水漏れを止めるのは困難です。 むしろ、下手にテープなどを巻くことで、破損箇所の状態が隠れてしまい、後から修理に来た専門業者が、原因を特定するのに手間取ってしまう可能性があります。また、無理に押さえつけようとすることで、亀裂がさらに広がってしまう危険性もゼロではありません。 では、水道管が破裂した時の、本当に正しい「応急処置」とは何でしょうか。それは、たった一つです。「屋外にある水道の止水栓(元栓)を閉める」。これ以外に、有効な手段はありません。破損箇所に手を加えるのではなく、水の供給そのものを元から断つのです。 パニック状態では、目の前の水漏れにばかり意識が向きがちですが、本当に重要なのは、その大元をコントロールすることです。水道管破裂に遭遇したら、テープを探すのではなく、止水栓の場所へ向かう。この正しい知識が、被害の拡大を防ぐための最も確実な行動なのです。
水道管破裂の応急処置そのテープは意味がないかも